![]() |
「お前、失敗した事ないワケ?」 突然と言われた言葉に何が、と振り向くと、枕を抱えたレッドがヒラヒラと”ゴム”を見せた。 「あ、おい、人のカバンを開けるな!」 「いや、面倒になる時ねぇの?コレ。」 シャワーでまだ濡れたままの髪をタオルで拭きながら、ヒィッツはレッドからそれを取り上げると、 「面倒とかそういう問題じゃあないだろう。」 「何で。」 「その一回で後が面倒になったらどうする。」 「んー?」 レッドはまだ髪を拭くヒィッツのタオルに腕を伸ばしながら、ほんの一瞬考え、 「ああ、ガキが出来たらって事か。」 そう言って、タオルを掴んで引き寄せた。 そのまま倒れそうになったヒィッツは直前でタオルを手放し、すぐにベッドから離れると、 「自分の血を引くモノなんて欲しくないぞ、私は。」 そう言って、一時間ほど前に飲みかけていたグラスを一気にあおる。 氷が溶けてぬるくなった酒は、薄いながら喉に貼りつく様な感触がある。 レッドはタオルに舌打ちし、ごろん、と仰向けに寝転がると、 「まーな。俺もいらねぇ。」 言い切り、自分の手のひらを天井に向かって仰ぎ見る。 「こんなイカれた血を引くなんて、ロクなガキじゃねぇ。」 「なんだ、自覚はあったのか。」 皮肉めいた声音にレッドは振り向きもしないでタオルを投げつけると、 「お前も同じだろ。」 そう言って視線だけ流す。 「…まあな。」 タオルは届かず床に落ちたらしいが、几帳面にヒィッツはそれを拾い上げると、 「だから私は自分の血は私で断ち切るのさ。もとより…。」 注ぎなおした酒は氷に邪魔されない琥珀色。 「こんな『仕事』をしていて、家族を持つ気が知れない。」 「―――――だな。」 同じ十傑集でただ一人『家族』を持つ男を、いまだにレッドは理解できない。 それはヒィッツも同じだろう。 「守るものを作る事は自分の弱点を晒すようなものだ。」 ヒィッツは今度こそベッドに腰かけると、 「そんなものをみすみす作って露呈するほど、私は愚かではない。」 ヒィッツの言葉は珍しく辛辣だったが、その裏の意味に気付かないほどレッドは勘は鈍くない。 「フン…。」 素直な言葉が吐けないのは自分も一緒だが、ヒィッツが言うと腹が立つのは何故だろう。 だが、そんな事は欠片も表に出さず、レッドは 「俺にも寄こせ。」 と、グラスを持つヒィッツの腕を掴む。 「おい待て、零れる。」 慌ててグラスを持ち替え、レッドのグラスを取ろうと腰を浮かすと、 「こっちがいい。」 そう言いながら、レッドは身体を起こす。 「こっちって…。」 「お前からがいい。」 そのままヒィッツの口の端に残っていた液体に舌を這わすと、口腔を侵す様にねじ込んだ。 「ンッ―――――!」 不意をつかれて割り込んできた舌を結局そのまま受け止め、 ヒィッツも自分の舌を絡ませる。 琥珀色の液体が残っていた場所から今度は透明な液体が筋を引いた。 ピチャ、とどちらともなく吸い取るように合わせた唇を離すと、 レッドはヒィッツの身体をシーツに縫いとめてしまう。 「おい…今日はもう…。」 ヒィッツが少し抗議の声を上げたが、レッドはまだ少し湿ったヒィッツの髪に鼻先を埋め、 「うるせぇ。」 一言返し、その髪に噛み付く。 ジャリ、と不快な感触があったが、気にせずレッドはそのまま髪を歯で引っ張った。 「痛ッ!」 その痛みに反った喉に素早く口付け、 レッドは形だけ羽織っていたヒィッツのシャツを剥ぎ取ると、 「…殺しても死なないガキなら作ってもいい。」 自分の足手まといなぞ要るものか。 「相変わらず無茶を言う…。」 そう言って笑った声は、自分も同じだと告げている。 弱点は要らない。 足手まといは要らない。 この身体も、魂も、何もかも要らない。 自分の血すら愛せないというのに、 ”守るもの”など要るものか。 「…たまに、『アソビ』は必要だけどな。」 そう呟いたレッドは、自分の下の肢体に歯を立てた。 * * * * * 十傑集の中でも家族のいるアルベルトは絶対特殊だと思うのですよ。 で、レッドとヒィッツは絶対自分も大事にしないから、 家族を持つ意味とか気持ちとかそういうことへの理解がなさそうかなと。 ”愛してる”事と”大事にする”事って時に別だと思ったりします。 意味が解りづらくて申し訳ない…。 |