理由を聞く必要は無い。
理由を聞く権利も無い。
理由を聞き出す手段はあっても、
それを行使する気は起きない。
だからヒィッツが雨に濡れていても、俺は何もしない。
いつからそこに居たのか、ヒィッツの姿は見事なまでに哀れだ。
髪も、服も、何もかもがずぶ濡れで、染みた雨にその色は変色している。
雫が髪を伝って頬に流れる様は号泣しているようで笑い飛ばしたくなる。
スーツの下のワイシャツもすっかり濡れたようで、
張り付いたシャツの下に肌が透けて見えていた。
白い異形の眼は、宙に視線を浮かばせ何も見てはいない。
だから、俺がこんなにも側に居ても気づかない。
気持ち悪ィ。
こいつは、何でこんなにも脆い。
普段のふてぶてしい姿を破り去ってしまえば、現れるのは細い骨組みだけだ。
その姿は見ていて気分が悪くなる。
ああ、なんでこいつはこんなにも弱い。
こうして腕を掴めば、掌には冷え切った肌が吸い付くばかりだ。
「…離せ…。」
やっと俺の方を向いた目は相変わらず遠い。
開いた口は拒絶の言葉を吐き出した。
「嫌だね。」
可哀相なお前に付き合って、
この俺が同じく雨に濡れてるんだ。
突き放せると思うな。
俺は、お前よりも遥かに強いのだから。
「放って置いてくれ…。」
口だけはまだ生意気だ。
本当は誰かにぶちまけたいんだと、何故言えない。
お前の本性は今、こうして雨に濡れて透けて見えてる。
上っ面な仮面はとうに溶けて無くなってるじゃねェか。
「そう言われて、俺が言う事聞くと思うか?」
甘いんだよ。
あんまりにも甘ちゃん過ぎて、殴りたくてたまらない。
殴って、蹴って、這いつくばらせて、
まだ認めないお前の顔、泥まみれにしてやりてェよ。
雨の中、揺れた眼はやっと焦点を合わせた。
お前の目の前に誰がいるのか、見えてるなら言ってみろよ。
「―――――何故、私に構う。」
可笑しいからだよ。
お前が惨め過ぎて、可笑しくて可笑しくて堪らないからだよ。
そうでなければこんな場所に居てたまるか。
こんな、雨の中に。
「何故放って置いてくれない?」
面白いからだよ。
お前のすました態度がボロボロになる様子が面白くて堪らないからだよ。
そうでなければ付き合ってられるか。
こんな、茶番劇に。
「頼むから………。」
俺がお前の言う事聞くと思うか?
そんな間抜けな泣き顔で頼まれて、俺が引き下がるとでも思うか?
なあ、いい加減気がつけよ。
お前の方こそ、頼むから俺を―――――
理由を聞く必要は無い。
理由を聞く権利も無い。
理由を聞き出す手段はあっても、
それを行使する気は起きない。
だからヒィッツが雨に濡れていても、俺は何もできない。
ただこの場所でこいつを引き止める事、それしか出来ない。
* * * * *
最近どうも意味の取りづらい話ばっかり書いてる気が。
というか、ヒィッツやレッドをいじめたいらしいです、自分(ぇ)。
弱さを認められないヒィッツ。そして気づいても何も出来ないレッド。
果たして不幸なのはどちらでしょうか。