| 汗が引いて、冷たくなり始める肌がレッドは好きだった。 もちろん誰のでも良いという事はなく、ここで指すのは特定人物ただ一人。 真夏のうだる様な暑さの中、引く事のない汗と熱にまみれた営みも嫌いではないが、 今の時期のように冬の夜は熱くなった肌と冷たい肌、両方がその手に残る。 そのいわば二面性が自分の気分を殊更良くした。 うつ伏せでやっと息の落ち着いてきたヒィッツの背にぺたりと張り付くように重なると、 「…重い。」 と一言、不機嫌なのか眠いのかわからない声が飛んできた。 その声が聞こえなかったふりをしてレッドは自分の肩をヒィッツの肩に重ね、 力なく伸びていた左腕にも同じように自分の腕を重ねる。 そうしてヒィッツの手の甲を自分の掌ですっかり押さえてしまってから、 指と指の間に自分の指を挟みこんだ。 ヒィッツが何事か呻いた気もしたが、今度こそそれは言葉にはならなかった。 ヒィッツの汗が引いて身体が冷え始めている。 同時に、レッド自身の身体もだんだんと冷え始めていたが、 胸はヒィッツの背に重なっているため冷えることは無かった。 また、ヒィッツの背中も同様だ。 その部分だけ妙な熱さが残って、レッドの脳裏に真夏の情事が過ぎったが、 あの特有の気だるさはここには無い。 それでも熱はなかなか引くことは無く、 レッドはもう少しその余韻が長引かないかな、などとぼんやり思った。 知らず、左手の指に力が篭る。 ヒィッツはやはり眠かったのか、妙にのんびりした声で 「重い…放せ…。」 などと呟いていたが、それはどうも本気では無かったようだ。 レッドはレッドでゆるゆると眠気が襲ってきていたが、 ヒィッツの肩口からうなじにかけて軽く鼻先を擦り付けると、 まるでその眠気を振り払うかのように、ヒィッツの耳の縁を軽く噛んだ。 ヒィァ、と痩せた子猫のような高い声がヒィッツの口から零れる。 その声にほんの少し覚醒したレッドは、そのまま舌を耳にねじ込んだ。 ビチャ、と、どことなく酸っぱい水音が響いて、ヒィッツの身体が一瞬跳ねた。 「やめ…レッド………。」 睡魔に身を委ねていたところで突然と引き上げられたヒィッツは、 それでもまだ完全に意識が戻ってはいなかったらしい。 嫌だ、勘弁、今日はもう、などとお断りのお決まり台詞がブツブツと聞こえたが、 いつも最後には潤む目は横を向いたまま朦朧としていた。 レッドはそんな様子に軽く舌打ちしたが、 自分も眠くない訳では無かったし、特に抱き足りない訳でもない。 汗が引いていつもの白さを取り戻していたヒィッツの首筋に一度だけ噛み付くと、 レッドは右手で放ったままだった毛布を手繰り寄せて潜り込む。 胸の熱とは違う、じんわりと温まる感覚が被った毛布を通して背中に伝わって、 このまま一緒に溶けてしまったらどんな気分だろう、などとふと思う。 ヒィッツはすでに夢の世界に旅立ってしまったようで、自分の下で規則正しい寝息が聞こえた。 重いなどと言ってた割によく寝られるなコイツ、とレッドはちょっと思ったが、 今に始まった事ではなかったか、と思い直し、 もう一度毛布とヒィッツの暖かさに身を委ねることにした。 このまま溶けてしまえたら、全てが自分の物になるのだろうか。 左手の指を絡めなおして、レッドは思う。 どれだけ抱いても触れても重ねても、結局は一つにはなれない。 それは外も内も、だ。 それが歯痒い。 二つのものが完全に一つになる事など有り得ないというのに、 何故か、ヒィッツに関してはその不可能を求めてしまう。 1+1を1にしたいのだ。2は要らない。 こればかりは、どれだけ無茶をしようと叶うことではないのだけれども。 モゾ、と自分の下のヒィッツが動いた。 髪の毛が少し乱れ広がり、レッドの鼻先をかすめる。 ああ、バカな事考えたな、と珍しく溜息をつくと、 これは自分が眠いからに違いない、と、強引に結論付けた。 乱れた髪の間から覗いたその肌にもう一度唇を押し当てると、 今度こそ寝よう、とレッドは目を閉じる。 それでも、もしかしたら朝になったら一つになってたり―――――。 自分とヒィッツが溶けて混ざり合う場面を想像して、 レッドはククッ、と小さく笑った。 * * * * * コトが終わってから甘えてるレッドが書きたかったんですが、 なにやらダラリとした甘々〜で終わってしまいました。 もう出来上がりすぎてて自分で腹が立ちますこいつら(笑)。 |