| 身震いのようにレッドの背中が震え、同時に腰の動きが止まる。 流れ落ちた汗がヒィッツの頬を濡らしたが、 ヒィッツ自身も流れるほどに汗を滲ませていたので気づかなかったようだ。 「………っく…ッ…!」 背中の痙攣は腰に達し、ヒィッツの内部へレッド自身の欲情を注ぎ込む。 ヒィッツの左脚を抱えていた指に力が篭った。 「ンぁア…ッ…!レ…ッド……っ…!」 うわ言の様な声がヒィッツの口からこぼれ、指がレッドの肩口を彷徨ってうなじに爪を立てる。 ヒィッツもまた、お互いの腹の間で達した自身の脈動に合わせて肩を震わせた。 呼吸に貪欲なその唇の隙間から舌が見える。 無意識にレッドがその口を自分の口で塞ぐと、小さな水音と共にヒィッツの舌先が自らレッドの口腔に滑り込む。 『―――――随分と…。』 慣れたもんだな、と密かにレッドは心の中で呟いた。 記憶の彼方に薄れているほど、初めてヒィッツを犯したきっかけは曖昧だ。 ただ言えるのは、同じ男に犯された事にヒィッツは当然の事ながら嫌悪を抱いていたし、 その後幾度と無く抱いた時も多かれ少なかれ抵抗され、 結果として殴打の末に身体を開かせた事も少なくない。 『だが今は…、』 レッドは自身のうなじに走る細い痛みに小さく眉をひそめる。 常にとは言わないが、求めれば抵抗無く応じる事は増えた。 時と場合によってはヒィッツの方から誘う様な言動をし、かまを掛ければ乗ってくる。 以前なら決して動かなかった腕も身体も、今ではこうして背中や肩に回る事も多く、 何よりも名前を呼ぶなど有り得なかった話だ。 レッドはヒィッツの舌先を軽く噛んだ。 腕の中でヒィッツの身体がビクリと身じろいだが、やはり抵抗は無い。 吐き出したのも手伝って、萎えた自身をレッドはヒィッツの中から引き抜く。 異物感からの開放からか、ヒィッツの喉の奥から大きく呼吸が漏れた。 「…随分乱れてたなヒィッツ?伊達男は返上か?」 見下ろしながらその顎に手を掛けると、一瞬の間を置いてその顔が視線を逸らそうとした。 だがレッドの手の力にそれは叶わず、結果としてヒィッツはレッドの含んだ視線を一瞥しながら、 「抵抗した所で止めるお前ではないだろう…だったら少しでも楽しんだ方が得と言うものだ。」 吐き捨てるように答え、顎を押さえているレッドの手に自分の指をかける。 自分の上からどけと言う、無言の指示だ。 フン、とレッドがそれでも珍しく素直に身体を退かすと、ヒィッツはゆっくりと身体を起こし、 「…お互い様だろう?」 「?―――何がだ?」 予想していなかった追加の一言にレッドは思わず聞き返したが、 ヒィッツはそれに答えず、まるで聞こえなかったかのようにバスルームへと足を向ける。 「おい、何が、」 今度こそ部屋に響くほどのはっきりした声でレッドは訊ねたが、返事は無い。 ドアの向こうに消えた背中は答えを拒んでいた。 ※ ※ ※ ※ ※ うやむやになった夜から3日後の夕方、レッドは任務を終えて本部への帰路についていた。 窓の外には忌々しいほどに眩しい夕日が見える。 レッドはマスクの内側から目を細めその夕日と朱に染まる雲海を眺めていたが、 一瞬視界を掠めた煌きに瞬きし、次の瞬間唐突に3日前の夜のやりとりを思い出した。 「………お互い様?」 何が、と言う疑問は未だわからないままだ。 だがあの時の会話の内容から察するに、レッドがヒィッツを抱く事についてであろう事は解る。 何が”お互い様”だと言うのか。 「そもそも俺は………。」 正直なところ、どうしてヒィッツを抱くのかは自分でもわからない。 男が男を抱くという行為が決して正常な事ではない事は百も承知であったし、 仮に女と男をのどちらかを選んで抱けと言われれば、当然女の方を選ぶ。 ただもしも、その選択肢にヒィッツが加わったとしたら話は別だ――――― そんな事を考えていた時、レッドの視界にまた夕日の中で煌くものが映った。 「―――――………。」 レッドの目が、暗闇の中の猫の様に見開かれる。 瞬きも忘れたその黒い瞳には痛いほどの朱が射し込んでいた。 |
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