嫌いだ。
殺したいほど憎い位に。
だからその腕を掴むのだ。
思い切り引き寄せて、
力の限り抱きしめて、
その奥深くまで身体を繋げる。
引き絞った弓がより遠くまで矢を放つように、
自分の届かないところまで突き飛ばす為に。





久々に意識が飛ばなかったらしいヒィッツは何故か動かずに天井を見上げている。
白い目は相変わらずまがい物の様で、見ているだけで気分が悪い。
何か言いかけたように微かに唇が動くのが見えたが、見なかった事にした。
こいつの言葉を聞く義理は無いし、何が言いたいのかは見当がつく。

何故。
どうして。
何の意味が。

それは、俺がこいつを犯した時から何度と無く繰り返された言葉。
もう聞くのも飽きた。
きっとこいつも言い疲れてる。
それでもこうして爛れた関係を交わせば、
その唇に浮かんで消える。
煩い。
そんな事、理由なぞただ一つだ。



嫌いだからに決まっている。



理由の無いその愛想笑顔。
常に何かを見下ろすような話し口。
自分と違うその異形の眼も、
明る過ぎる髪の色も、
何もかもが嫌いだった。

だから。

その笑顔が消える所が見たかった。
見下す口から懇願の声が聞きたかった。
その眼を懸命に逸らさせて、
髪を掴んで乱してみたかった。
その全てをぶち壊してやりたかったから。





―――――それでも、あいつは変わらない。
        まるで俺の行為が無意味だとでも言いたい様に。





俺の下で喘ぐ声は、
別の場所で女に『愛』を囁く。
俺から逸らす視線は、
他の奴等と重なり、その『記憶』を残す。
乱した髪は朝には整うし、
貫いて汚した身体に何の意味も無い。

何故。
どうして。
何の意味が。





届かない所まで突き放す為に引き寄せた身体は、
どうして俺の元から離れない?










………嫌いだったんだ。
殺したいほど憎い位に。
だからその腕を掴んだんだ。
思い切り引き寄せて、
力の限り抱きしめて、
その奥深くまで身体を繋げた。
引き絞った弓がより遠くまで矢を放つように、
自分の届かないところまで突き飛ばす為に。
それなのに。





あの夜、気づかない振りをした。
微かに唇が動くのが見えた、あいつの声。



『…馬鹿だな、お前は…。』








―――――バカはお前だ、畜生が。
やっと届かない場所まで落としてやったのに。












* * * * *

時間軸はヒィッツ死後で(…)。
【黒絵50題】の方で書くか悩んだのですが、
久々に自身の感情に翻弄されるレッドが書きたくなったのでこちらで。
これでもレドヒツと言い張る。

絶望的な愛し方ですが、
これが彼等の”相思相愛”。