「………何やってんだお前ら?」
レッドに声をかけられ、間違いなく10センチ以上は飛び上がったのは下級エージェント数名。
自分付きの者も含め、他のセクションのエージェントも混じっていたらしい。
もっとも、ぱっと見は誰が誰だか解る筈も無いが。
「れ、レッド様?!」
「え、いや、その、何故ここに?」
エージェント達の疑問ももっともだ。
ここは本来十傑集の様な幹部クラスが立ち入る場所ではなく、いわば下級エージェント達の休憩室。
過去に十傑集の面々が顔を出した事は無い。
だがレッドはフン、と不本意だと言う顔を見せ、
「どうも最近お前らの内々で何か出回ってるという噂が流れていてな。
 新型のドラッグだとか、実は二重スパイが居るとか、憶測が飛んでるんだよ。」
その中心がレッドの配下のエージェントらしいという事から、レッドは孔明より直々の内偵を命じられたのだ。
そして今、その話の最中に1人のエージェントがコッソリと何かを隠しているのに気づかぬ程、
レッドの目は節穴ではない。
「…で?何を隠しやがった?」
「いえ、別に何も………!」
下級エージェントは否定したが、マスクの上からでも解る冷や汗は明らかに何かを隠している。
「ほーお、俺に隠し事とはいい度胸だ。」
言うが早いか、レッドは刀の切っ先をそのエージェントの目の前に突きつけると、
「もう一度だけ聞いてやる…何を隠した?」
ジリ…と一ミリあるかないかの刃の先がマスクの上をほんの少しだけ滑り、
エージェントの鼻の先からツゥ…と血が滲んだ。
「も、申し訳ありませんレッド様!」
エージェントは慌てて床に額を擦り付けて謝罪すると、
「………これです…。」
先刻後ろ手に隠した物を僅かに震える手で差し出す。
周囲で見守っていた他のエージェント達から落胆の溜息が漏れた。
「ふん、素直に出せば良いものを…。」
そう言って差し出された物を受け取ったレッドは、”それ”の正体に目を丸くした―――――。





※ ※ ※ ※ ※





「………で、結局それは何だったんだ?」



レッドと下級エージェント達のやりとりがあった日の夜。
珍しくレッドの部屋で酒のつまみに内偵の話を聞いていたヒィッツは先を促した。
「それがアホらしい事にな…コレだよ。」
気が抜けたと言うか本気でバカにしていると言うか、
レッドは酒も手伝ってゲラゲラ笑いながらヒィッツの目の前に四角いケースのような物を放り出した。
「…『ネオ・プレイメイト・ワールド』?」
ヒィッツの目の前に寄こされたそれは単にビデオディスクであって…あえて付け加えるならば、
「なんだ、AVか。」
心底呆れたようにヒィッツがソファに背中を預ける。
「馬鹿馬鹿しい。何でこんな物でエージェント達はコソコソと…。」
「まあ本部は特に女ッ気が少ねェからな。ネタに飢えてんだろ。」
「それにしてもだな…。」
ディスクのジャケットでは金髪碧眼の美女が、そのグラマーな裸体で艶かしいポーズを取っている。
もっとも、ヒィッツからしてみれば興味をそそるような美女ではない。
裏を返して見たが、ブルネットや赤毛の女優達がいかにもな格好でこちらを見ていたり、
何やらワンシーンらしい場面で悶える顔がアップになっていたりするだけだ。
「低俗だな。お粗末過ぎる。」
「まあズリネタになればいいんだろ。お前が普段コマしてる女と比べるなよな。」
あけすけなレッドの言い方にヒィッツは自分のスタンスを馬鹿にされたと感じたのか、
ムッと眉をひそめたままグラスの酒をあおった。
レッドはそんな様子をやはり愉快そうに見ていたが、
不意に思いついたようにそのディスクを取り上げると、
「なあ、これちょっと観て見ようぜ?」
そう言って、テレビモニターの方へと足を向ける。
「はあ?何故私が、しかもお前とそんな物を観なければ…。」
「別にこーいうの観た事が無い訳じゃないだろ?
 それに、エージェント共がコソコソ回し見する位のネタってどんなんだか興味ねぇ?」
「ん………それは…。」
そう言われてしまうと何となく気にはなってくる。
確かにヒィッツだとて歳相応の健康な成人男子だ。AVを観たりそれで処理した経験が無い訳ではない。
「それにもしかしたらAVはカモフラージュで、
 実際の中身は機密事項のデータだったりするかも知れないし?」
その言葉は明らかにディスクを観る為の口実だろうが、一理はある。
まあどうせ話にも飽きてきた所だ。時間潰し位にはなるだろう、と、結局ヒィッツも了承し、
2人は揃ってそのディスクを観る事にしたのだった。





※ ※ ※ ※ ※





ディスクは本当に只のAVで、ヒィッツは見始めて30分程で飽きてきてしまった。
パッケージにも出ていた金髪の美女が思わせぶりなストリップショーをしたかと思えば、
一見清楚な雰囲気の女優が男優2人に身体を開いたりしている。
「おいレッド、間違いなくこれは普通のAVだぞ。」
ヒィッツは自分の分だけもう一杯水割りを作りながら声をかけたが、返事が無い。
おい?と顔を上げると、レッドは半笑いでテレビに見入っている。
『何だかんだ言ってもレッドも男だな…。』
ヒィッツは心で溜息をつくと、ディスクは後どれ位で終わるのだろう、と欠伸を噛み殺した。
と、その時。
「あ。」
何やら小さな声が聞こえ、ヒィッツはもう一度レッドの方を見た。
レッドは酒のグラスを置いたところだった様だが、その目線はテレビから全く動かない。
食い入るような、という形容詞がピッタリなその様子に、ヒィッツもつい何事かとモニタを見た。
場面はまた変わっており、今度は赤毛の女優が男優に奉仕している姿が映し出されている。
だが、別にレッドの動きが止まるような要素は見当たらない。
ヒィッツは首を捻ると、
「おいレッド?どうかしたのか?」
まんじりともしないレッドの肩を掴んで声をかけた。
「―――――。」
レッドは一度ヒィッツの方を見、次にテレビのモニタを見直し、またもう一度ヒィッツの方を見ると、
「なあヒィッツ、この女、お前に似てるよな?」
そう言ってテレビを指差した。
「はあ?」
ヒィッツは思わず間の抜けた声を返し、つい釣られてまたテレビを見てみたが、
伏し目がちな赤毛の女優がその赤い唇で奉仕する場面が続いているだけだった。
「なっ!私とコレのどこが似ている!?」
顔を紅潮させ怒鳴ると、ヒィッツはそのまま立ち上がり自室へ戻ろうとした。
だが一瞬早くレッドの腕がヒィッツの腕を掴むと、そのまま自分の足元へと引き倒してしまう。
「この馬鹿ッ!放せレッド!!」
レッドの膝で軽く額を打ったヒィッツは起き上がろうと床に手をついて怒鳴ったが、
その間にレッドの両手はガッチリとヒィッツの顔を押さえつけてしまっており、不安定な体勢のまま動けない。
いつ止めたのだか解らなかったが、レッドは一時停止をかけた画面とヒィッツを見比べながら、
「同じにすればもっと似るかもな。」
「何が同じに…!」
ヒィッツが疑問を問いかけようとして開いた口に、何か生暖かいものが捻り込まれる。
「ムグ…っ!」
それがレッドの屹立したモノだと気づくのに数秒を要した。
「ンン〜〜〜〜〜!」
ヒィッツはすぐに顔を背けようともがいたが、レッドの手がそれを押さえ込んでいてままならない。
両手も体勢を支える為に床に付くのが精一杯で、
レッドが少し腰をずらすと、ヒィッツの口内の圧迫は更に増した。
「ング…ッ…!」
「あ、やっぱりこうすっと良く解るな。」
そう呟いたレッドは満足そうに口角を上げると、グイ、とその腰を更にヒィッツの方へ押し付けた。
息苦しさに気道を確保しようと伸びた舌がレッド自身に当たり、ピチャリと水音が響く。

―――――その淫猥な音にゾクリときてしまったのはレッドだけではなく。

「やっぱそっくりだぜ。そのヤラシイとことか。」
そう言うと軽く唇を舐め、そのまま先を促すかのようにヒィッツの髪を掴んで位置を止める。
ヒィッツはギッとレッドを睨んだが、上目遣いのその目は息苦しさのせいかどこか潤みがちで、
本人が意識するほど迫力はない。
「どうせいつもしてるだろ?なあ?」
言い方は軽いが、手に込められた力は強い。
レッドの左手はいつの間にかヒィッツの首に指をかけており、抵抗すれば容赦無く絞め落とされるだろう。
不本意ではあるが、こうなってしまった以上は逆にさっさと終わらせてしまった方が賢明なようだ。
ヒィッツは仕方なく一度目を閉じると、そのまま口の中で舌を動かし始めた。
チュプ…と小さい粘膜質な音がヒィッツの口の中に響く。
先刻までのやりとりでもうレッド自身は硬く肥大していて、
唇の先に触れたそれは熱く、”棒”という表現がまさに的確だ。
ヒィッツの舌先にレッドの先走った苦味が触れたが、
自身の唾液と混ざったそれは、口の端から零れて顎を伝い、鎖骨まで道を描いた。
「こっち見ろよ、ヒィッツ。」
伏せていた目が不満だったのか、レッドが少し髪を引いた。
羞恥心からレッドの顔を見上げるのがはばかられたヒィッツであったが、
仕方なく舌を動かしながら、ゆっくりとレッドの顔を見上げる。
まだ少し生理的な涙が滲んでいる目はひどく扇情的で、レッドは無意識に唾を飲みこむ。
たどたどしく自身をなぞる舌の動きとその目の色に、レッドのそれは一気に達した。
「くッ…!顔逸らすなよ?ヒィッツ…!」
言うが早いか、レッドは突っ込んだ時と同じ様に一方的に自身をヒィッツの口から引き抜くと、
その情欲の液体を一気に噴出させた。
「グ―――――っ!」
「ンあ…ッ!」
紅潮したヒィッツの顔をレッドの白濁の残骸が容赦無く汚していく。
引き抜かれた時の勢いで口元から零れたヒィッツの舌は赤く、
モニタで止まったままの女の唇に似ている。
まだ多少朦朧としているヒィッツの口の端から新たな唾液が伝い流れるのが見えると、
一度達したレッドの欲情にまた火が点いた。
リモコンでディスクを再生し始めると、少し遅れてモニタの中の女優も達した男に顔を汚される。
そして次の場面でその女が男の上に跨るのを確認すると、レッドはヒィッツのシャツのボタンを外し、
「下は自分で脱いで、俺の上に乗れよ。」
そう耳元で囁いた。
言われた意味を一瞬図りかねたヒィッツだが、すぐに今以上に頬を上気させると、
「誰がそんな真似を…ッ!」
「そうしなかったら、このまま全部切り裂くぜ?」
そう言ったレッドの右手には懐剣が刃を光らせている。
「何も履かずに部屋まで戻るか?なあヒィッツ?」
「〜〜〜〜〜ッ!」
レッドの目は好色そうに笑ったままだったが、言葉に嘘は無い。
一度かしづいてしまった時点でレッドの手に堕ちたヒィッツには、その言葉通りに従うしか道は無かった。



カチャカチャとベルトのバックルを外す音がし、次の間にはファスナーの微かな音と、
スラックスが滑る衣擦れの音が響く。
テレビの映像では女が楽しそうに男の首に腕を回し、腰を落としたまま熱烈な接吻を繰り返していた。
レッドはそんな映像をバックに自身を曝け出さなければならないヒィッツの痴態に口角を上げると、
「すっげぇエロくせぇ格好。」
わざと大袈裟に言うと、その腕を引いて自分と合い向かいになる様に腰を落とさせる。
先刻一度達した筈のレッド自身はもう既に大きく屹立しており、
まだあまり余裕の無かったヒィッツを勢い良く突き上げた。
「あぅッ!!」
思わず嗚咽に近い声がヒィッツの口から飛び出したが、
レッドはそれに構わず、グイと腰を更に押し付ける。
捩じ込まれたような状態のレッド自身に中を圧迫され、ヒィッツは無意識に歯を食いしばっていた。
「そんな顔してんじゃねェよ、ほら、」
行動に伴わない、ひどく優しい言葉をかけると、レッドはその夜初めて口付けた。
啄ばむように吸い付いた唇が軽くチュ、と音を鳴らすと、
レッドの口の中にも微かに苦みばしった味が広がる。
「あー、すげぇ味。」
それでも笑ったレッドはそのまま晒されたヒィッツの胸に舌を這わせた。
ヒィッツ越しに見えるモニタの中では、やはり突き上げられた赤髪の女優が胸を揺らして悶えている。
男優の様子を真似てレッドが目の前の乳首に歯を立てると、電流に打たれたように震えるヒィッツの身体。
同時に自身を締め付ける力が強くなり、レッドにも甘い痺れが起きる。
その悦楽を突き詰めたくて、レッドはそのままヒィッツの腰を支えて律動を始めた。
「ヒぁッ!あっ!ああッ…!」
ギシギシと二人分の体重にソファが軋む。
ヒィッツの反り返った喉が震え、漏れる声は痛みに耐えるものから快感に耐えるものに変わり、
荒い息遣いと言葉にならない声が部屋に響いているが、互いにそれが自分達の物なのか、
はたまたディスクの女達の営みなのかがもう解らなくなって来ていた。
「レッド…っ!あ…あ……ン…っ!」
気づいた時には嬌声がヒィッツの口から繰り返され、その腕も女と同じ様にレッドの首から背中に回って、
ソファの軋む音はヒィッツ自身のリズムに合う形になってきている。
いよいよ締め付ける力が強くなり、さすがにまた次の限界が見え始めたレッドは、
もう一度だけヒィッツに口付け、自分達の間で張り詰めているヒィッツ自身に手を添えた。
「ン―――――ッ!」
塞がれた口の中で、ヒィッツが息も止まらんばかりに一気に上り詰めてきたのを確認すると、
レッドは一瞬間を空けて自身の腰を引き、次には楔を打ち込むが如くヒィッツの腰を突き上げた。



「あァ―――――っ!」
「く………ッ!!」



白く瞬いた意識の中、
レッドの視界には同じく絶頂に達したヒィッツと、その向こうの女の顔が重なっていた―――――








※ ※ ※ ※ ※





『なんだ?AVかよ?何でこんなモンでお前らコソコソしてたんだ?』
レッドのもっともな質問に、エージェント達は一度顔を見合わせ、何やらボソボソと言い合っていたが、
やがて1人のエージェント…ヒィッツの担当セクションの男だった…が思い切ったように口を開いた。
『このディスクに出てくる赤毛の女優が…その…ヒィッツカラルド様に……。』
『は、あ?』
意外なところで上がった名前に、レッドはまた目を丸くしていたが、
もう1人…こちらは情報管理室…のエージェントが後に続く。
『そっくりって訳じゃないんです!でも、何となく雰囲気が似ていて…なぁ?』
『そういう噂が何となく流れて、興味持った奴等で回し見を…。』
『あ、あの、レッド様!どうかヒィッツカラルド様だけにはご内密に!
 孔明様や樊瑞様への報告はもちろん覚悟しておりますけども!』
そう言って床に額を擦り付けんばかりに、エージェント達はレッドに向かって頭を下げた―――――。





「………初めは確かに似てるかもなぁとか思ったけどよ…。」
レッドはカーペットの上に足を広げて座り込むと、チラと後ろのソファを見やった。
結局あのまま意識を飛ばしてしまったヒィッツは前後不覚になってしまい、
今はソファに寝かされ、何とか落ち着いた寝息を立てている。
さすがに脱がせた状態で晒しっぱなしというのも何かと思い、
レッドにしては珍しく気遣い、ヒィッツの身体には薄掛けの毛布がかかっていた。
リモコンで一度巻き戻し、赤毛の女優の場面を再生する。
見始めた時のような感覚はもうレッドには無い。
奉仕する顔も、頬を上気させ善がる顔も、明らかに只の女の顔で。
「前言撤回。似てねェな、ウン。」
一人納得し、レッドは氷が溶けて薄まってしまった水割りをあおると、
「コイツの方が全然エロくせぇし、イイ反応だぜ。」
そう言って小さく肩を揺らして笑う。
「…もっとも、それを教えるような勿体無い真似はしねェけどな。」
他の奴等はせいぜい安い女で安い妄想をしてればいい。
そう呟いて、レッドはディスクの停止ボタンを押した。










* * * * *

最近レドヒツでエチーになるとどうも妙なプレイが混ざる気が…!
でもレッドはエロ学究(※某Pさん発言)でいいです。ヒィッツに対してだけ(うわぁ)

っていうか、とうとう部下までヤバイ奴らが出始めちゃってどうしましょう。
まあ何が出来る訳でもないからいいか…(いいのか