| 「暑ィ。」 そう呟いたレッドの声は既に口を開くのも億劫そうだ。 だがそう言わずにはいられない程、今日の気温は異常だった。 「解ってるから言うな。余計暑くなる。」 ヒィッツはいつもより多少軽い、麻混の生地で仕立てたスーツだが、 そんな服だけでこの暑さが凌げるなら何の問題は無く……… レッド同様、暑さに苛立ちを覚えずにはいられない状態だった。 ※ ※ ※ ※ ※ 居住棟の空調が壊れたのは今朝の事である。 これが一部屋ごとの単位での故障ならまだ救いがあったが、 中心部の機械の故障だったのがまず不幸の始まり。 そして修理班でもてこずるような、精密な部分の故障だと解るまでに3時間。 修理の部品が無い事が解ったのは更にその30分後。 手配させたものの、それが昼になってもまだ到着していない。 ここ数日の異常気象は午前中の数時間で一気に建物の室温を上昇させ、 現在、ここヒィッツの部屋の室温は32℃。 ちなみにレッドの部屋は温度計なぞ見るのも恐ろしい状態で、 まだましなヒィッツの部屋に”避難”しているのである。 しかもこれが休暇中なら外部に出てしまうなり敷地内の自身の屋敷に帰るなり出来るのだが、 孔明から任務を下すという事前連絡をもらっていたのが更に不幸の上乗せ。 ならば本部棟の執務室の方がマシでは、と思うところだが、 この暑さで勤勉力など低下した今、これ以上余計な仕事を抱えたくないのも人情。 命が下ればとっとと本部を離れられるのだし、帰ってくるまでには空調も直っているだろう、と、 妙な怠け根性が働いてしまったのも原因の一つであった。 「つか、お前格好が暑い。」 朝から何杯目になるか解らないアイスコーヒーを飲み干し、氷まで噛み砕くと、 レッドは心底うっとうしそうにヒィッツを睨んだ。 先述の通り、ヒィッツは麻混のスーツとはいえいつもとあまり変わらない格好だ。 任務が来たらすぐに出られるように…との配慮のためだが、 レッドからしてみれば”出る時に着替えればいい”のであって、 この暑さの中、ネクタイまでキッチリ締めているその姿は我慢大会にも等しい。 そんなレッドはいつもの特注スーツはソファに放ってあり、 いつもなら下に着込んでいる鎖帷子も同様。 その代わり黒のタンクトップといういでたちだ。 名前を示す赤い仮面も外されて、首周りが暑いせいかマフラーも無い。 『本当にこいつはニンジャなのだろうか…。』 何かにつけて湧く疑問が、今日もヒィッツの頭を過ぎったが、 「人の部屋にきて人の服装にまで文句を言うな。」 とりあえず、否定された自分のスタイルに関して答えてみた。 「でも暑くないわけじゃないだろ?」 「そりゃあ…。」 「俺みたいにとりあえず着替えは準備しておいて、呼び出されるまでは軽装でいりゃいいだろ。」 『あのどう見ても放ってある状態は”準備”だったのか―――――。』 ヒィッツは心で突っ込んでみたが、口には出さない。 しかし、考えてみれば一理ある気がしてきた。 「ふむ…これでいざ着替えた途端に呼び出されたら馬鹿みたいだがな。」 「これ以上オマエがバカになる事はねぇよ。」 「………真っ二つにされたいのか?」 ほんの一瞬だけヒィッツの額に本気の青筋が浮かんだが、余計暑くなる、とグッと堪えると、 着替えを準備するために寝室へと向かった。 ※ ※ ※ ※ ※ スーツとネクタイをハンガーに掛けて準備し、中のワイシャツもそろえてベッドに置くと、 ヒィッツは夏用のシャツに替えた。 普段私服として使っているもので、薄いクリーム色の生地に白で目の細かいストライプが入っている。 いつものスーツから考えれば目にも軽い服装だ。 肘まで袖をまくると、確かに気分的にも多少は暑さが凌げている。 少し気分を良くしてヒィッツがリビングに戻ってみると、そこにレッドの姿は無かった。 「ヒィッツー、コーヒー飲んじまうぞー!」 キッチンから声がして、製氷機の氷の音がする。 「飲むのは構わんが、次を落としておけよ?」 「お?何だこれ?アイス?」 ヒィッツの言葉に返事は無く、代わりに冷凍庫を漁っているらしき声が聞こえてくる。 聞こえない程度に、それでいて盛大に溜息をつくと、 「バイントか?余りだから食べてもいいぞ。」 以前サニーに付き合って作ったお菓子作りで使ったアイスが残っていたのだ。 それで大人しくなってくれるなら良いのだが、とヒィッツは一人用のソファに座り直すと、 氷がほとんど溶けてしまった自分のグラスのコーヒーを飲み干した。 「あー、生き返る〜!」 レッドはアイスを抱え込み、上機嫌でスプーンで掬いながら戻ってきた。 バニラアイスのバイントは少し食べた跡があったが半分くらいは充分残っていて、 普段あまり食べる機会の無いアイスをじっくり堪能できる。 ヒィッツは振り向いて一言、 「カーペットにこぼすなよ?」 と、最低限の注意だけすると、すぐに手にしていた雑誌へ目を落としてしまった。 「ガキじゃねぇっての。」 レッドは言いながらスプーンに溢れんばかりに掬ったアイスを頬張っていたが、 「一口食う?」 「いらん。」 「冷たいもの身体に入れるだけでもだいぶ変わるぜ?」 「さっきアイスコーヒーを飲んだから、私は遠慮しておく。」 そう返したヒィッツはレッドの方を見てもいない。 何となくその態度が面白くなく…レッドは少しムッとした様子でヒィッツの後姿を眺めていたが、 「………。」 小さく掬ったアイスを持って音も無く背後に近づくと、 シャツから少し覗いていた首筋に、 ポトリ。 「!!!!!」 不意に首筋を襲った冷たさに、思わずヒィッツが弾かれたように立ち上がる。 「な、何すッ…!」 慌てたヒィッツの様子にレッドはゲラゲラと笑い転げると、 「人の親切心を足げにしてっからだ、バーカ!涼しくなっただろ?」 そう言ってもう一掬いを口に放り込む。 「涼しいとかそういう問題じゃ…!あッ!」 言っている間に、溶けたアイスが立ち上がった弾みで背中に落ちたらしい。 ヒィッツは慌ててシャツのボタンを外すと、アイスを取り去ろうとそのシャツを落とした。 「いくら暑いって言ったって、ストリップサービスまでしなくていいぞー?」 やはりアイスを抱えたまま、レッドは今度はニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべてその様子を眺めている。 「誰がそんな事するか、馬鹿!」 ヒィッツはギッと睨んだが、とりあえず今はシャツの方が優先らしい。 やっと脱げたシャツを手早く丸めると、ヒィッツはレッドの脇を抜けて 洗濯機のあるバスルームの方へと足を向ける。 だが。 「…まあ待て、ヒィッツ!」 「うわ!?」 声と同時に横に足が出され、慌てていたヒィッツは見事につまづき、 無残にも正面から転んで顔を打った。 その隙を逃さず、レッドはその腰の上に陣取ってしまう。 「何をする!退けこの馬鹿!」 「なに、折角サービスしてもらったし、お礼に涼しくしてやろうかな〜ってな?」 背後から腰の上に乗っかられているせいで上手く振り向けないが、 ヒィッツの目の端に映っているのは明らかに何かを企んでいるレッドの顔。 一瞬にして顔面蒼白になったヒィッツは暴れもがいたが、それも徒労に終わった。 その間にレッドはさっきよりも多めに掬ったアイスをヒィッツの肩甲骨の間辺りに落とす。 「冷たッ!!」 「そりゃそうだ、アイスだぜ?冷たくなかったらおかしいだろ。」 そうこうしている内にアイスはヒィッツの肌の上で溶けて白い練乳のような姿に変わっていく。 レッドはそのアイスの溶けた筋を辿るように、うなじから背中にかけて舌を這わせた。 冷たいアイスの溶ける感覚とレッドの熱い舌の感触が同時に背中を伝って、ヒィッツの肩が震える。 「や…ッ!止めろこの変態!」 何とか押し出したヒィッツの台詞に、レッドはクククッ、と含み笑いをすると、 「その割に反応してんじゃん。」 言いながら、溶けていくアイスに追加するようにヒィッツの背中や首筋、肩、と、アイスを掬っては落としていく。 「くッ………ン…は………ぁッ!」 アイスの冷たさとレッドの舌の熱さが交互に自分の背中に落ち、堪えた口の端からも声が漏れる。 やがて首筋から溶けたアイスが重力に逆らわずにヒィッツの胸元へと滑り落ちると、 びくん、とヒィッツの身体が跳ね、その両手が思わずカーペットに指を立てた。 「ん?何だ?まだ足りないのか?」 「違………!」 羞恥にヒィッツが慌てて首を振るが、レッドは一度アイスを脇に置くと、 「さすがにもうそろそろ残ってたアイスも溶けてきてんだけどな。」 そう言って、素早く自分と床の間のヒィッツの身体を仰向けに転がしてしまう。 「あともう少しだし、食っちまおうぜ?」 そう言うと、レッドはスプーンに残っていたアイスを全部掬い取り、ヒィッツの胸の上に落とした。 「はうッ!」 室温と、それ以上に上げられた体温に逆行する冷たさに、ヒィッツの背が弓なりに仰け反る。 無意識に逃れようともがいた手はレッドに押さえつけられ、思うように動かせない。 その間にレッドは舌先でアイスの塊をヒィッツの肌の上に滑らせ、 屹立した突起や無駄も無く締まった腹部へと伝わせていく。 「あ…止めろレ……ドっ………!」 見る見るうちにアイスは溶け、白い甘い液体だけがヒィッツの身体に広がっていく。 同時に、酔いそうなほどのバニラの香りが、暑い室内に充満していく。 「うわ…オマエ、すっげぇ格好。」 明らかに面白がっているレッドの声にヒィッツは思わず顔を背け、目を閉じた。 その様子にレッドは薄く笑うともう一度腹部に口付け、そのまま下着ごとスラックスを取り去ってしまう。 「なんか、まだ突っ込んでねぇのに何回もヤられた後みてぇ。」 「バ…!何でそうお前は………ッ!」 レッドのあまりに下品な発言に、ヒィッツもさすがに声を荒げ、身体を起こそうと再度もがく。 だがレッドはその前に唇をその口に押し当ててもう一度押し倒してしまうと、 「俺は、オマエが汚れていくのを見るのが好きなんだよ。覚えとけ。」 そう言ってヒィッツの腰を上げると、怒張したレッド自身を押し込んだ。 「!―――――ああッ!」 普段より慣らされる間もなく突き上げられ、ヒィッツの息が上がる。 「ぅ………流石に…まだキツかったか………!」 レッドの方も普段よりきつい締め付けに眉をひそめた。 だが少しづつ律動を始めると、普段の感覚が快感という波になって互いを襲う。 いつもなら歯を立てるような場所に、 今日のところは舌を這わせて甘い水を舐め取る事で我慢しつつ、 レッドは更に腰を進めながらもう一度ヒィッツに口付けた。 「ン―――――。」 一瞬だけ、流れた汗が飛び込んできて舌先に塩辛い味が広がったが、 次には散々嗅ぎ慣れてしまったバニラの香りと甘いクリームの味に絡め取られて消えてしまう。 もうお互いの身体は汗と溶けたアイスでぐちゃぐちゃだったが、 そんな醜態であるという事も既にどこか遠いところへ消え去ってしまった。 まだ外は明るく、きっと真夏のように健康的な陽射しが輝いているであろうが、 それに反した不道徳な営みである筈の行為に、2人はいまや何の躊躇は無い。 クチュクチュと粘つく水音が大きくなり、互いの身体の動きが大きくうねった。 「ッ…!!」 「クぁ……っ!」 レッドの身体が大きく痙攣し、それを追う様にヒィッツの身体も僅かな間の硬直の後にブルリと震える。 そのままレッドの身体がヒィッツの上に覆い被さってしまうと、 互いの胸の間で微かに漂ったバニラの香り。 「―――――しばらくは…。」 「………何だ?」 小さく呟いたレッドの声に、思わずヒィッツが聞き返すと、 「しばらくは俺、もうアイスは食わねぇ。充分だ。」 そう言って顔を上げ、ヒィッツの頬をベロリと舐め上げて笑う。 ヒィッツは何か言いたそうに口を開いたが、 すぐに右手を自分の目の上に当て、また顔を背けてしまうと、 「………同感だ。」 そう呟いた口の端に、乾き始めたバニラの跡。 些細な事だったが何故かそれが妙に愉快な気分になって、 孔明のコールがかかるまで、2人は笑い続けていたのだった。 * * * * * ああ暑苦しい。(今更。) 萌えを発散しようとすると妙なエロにいく自分。 レッドがますますおかしな方向に突っ走っている気が。 とりあえずこの後絶対遅刻してるよな、2人とも。 で、任務の報告書と一緒に反省文書かされるんだきっと。 (小学生か) あ、「バイント」(「パイント」)は体積の単位です。 今はほとんど使われませんが、 アイスクリーム(※あのレディー○ーデンとかの大きいカップ)の場合はまだ使います。 (でもどっちが正当なのかな…どっちも検索に引っかかるんだけど…) |