サイダー
透明な泡は勢い良く弾けていて、
見ている分には涼やかで美味しそうだ。

「飲まないのか?」

そう言ったヒィッツは不思議そうに眺めている。
彼の前にも同じグラスがある。
その色は限りなく透明で、同じ自分のグラスよりも鮮やかに見える。

「炭酸が抜けるぞ?」
「ああ、うん。」

ヒィッツがそのグラスを取って一口飲む様子をつい観察してしまう。
本当に、何で、俺はまた。

「幽鬼?」
「………。」

勧められた時に言えなかった一言が泡になって弾けて消える。
グラスの中の氷すら自分を笑っているようで。
俺は結局一度マドラーでグラスをかき回すと、
その淵にゆっくりと口をつけた。

「―――――ゲホッ!」

一度火がついた喉の違和感は抜けない。
涙目になった俺の背を叩きながら、

「炭酸が苦手なら言えば良かっただろうに。」

そう呟いたヒィッツの顔は苦笑していた。





* * * * *

………その顔が見たくなかったから…。(幽鬼・談)



お題提供:【約30の嘘】