マシュマロ・チェイサー
(残ヒツ) |
|
正直言うと、残月は甘いものはあまり好きではない。
控えめな甘さというのは最近になってやっと出回り始めた感があるが、
それでも世間一般的に出回っているいわゆる”菓子類”は、
残月の舌には「甘い」としか感じられない。
チョコレート然り、クッキー然り、キャンディー然り。
コース料理のデザートに生クリームが乗っていようものなら、
そっと気づかれないように皿の端に追いやる事もあるくらいだ。
そんな彼の目の前に、マシュマロの山。
新手の拷問だろうか。
彼は一筋伝った汗を悟られないかと思ったが、
幸いな事にトレードマークのマスクは汗も表情も隠してくれたようだ。
「味の感想を聞きたいんだが。」
そう言ったヒィッツの顔は妙に神妙だ。
珍しくヒィッツの方からの来訪につい気が緩んで部屋に招き入れてしまったが、
そこで差し出されたのがこの白い菓子の山。
「ヒィッツ、これは…。」
「お嬢ちゃんのリクエストでマシュマロを作ったんだが、どうにも加減がわからなくてな。」
試行錯誤しているうちに、この大量生産に至ったらしい。
「自分の舌はもう味見で麻痺してて駄目なんだ。」
そう言って軽く舌を出して指をさす。
その仕草は普段の彼らしからぬもので、ある意味いいものを見た気もするが。
「しかし、その…。」
「お前の感覚は信用できるからな。率直に感想が欲しい。」
そう言われてしまっては返す言葉が無いではないか。
絶対の信頼を勝ち得ていた代償は、自分の嗜好との勝負になった。
|