「はん?桃の節句?」

セルバンテスの薬酒攻撃から何とか立ち直ったヒィッツは、
立ち寄ったサロンでレッドと出くわした。
何やら手酌しながらやはり昼酒しているらしかったレッドに、
ヒィッツは事の顛末を語って聞かせたのだが。
「ガキの成長だか健康だかを祈って、ってのは合ってるけどな。
 途中の知識は一体どっから引っ張ってきたんだあのオッサンは。」
レッドは持っていた器を茶でも飲むようにあおると、
「桃の節句の時に飲むのは白酒ってんだよ。」
「白酒?」
「今俺が飲んでたヤツ。」
そう言ってレッドは瓶を取り上げ―――――
「あ、何だもう終わっちまった。」
レッドは立ち上がると、
「…ちょっと待ってろ。持って来てやる。」
「いや、別にわざわざ………。」
思いがけないレッドの言葉と行動にヒィッツが軽く手を振ったが、
「まあ待ってろって。」
言いながらレッドは口の端を上げた。



程なくして戻ってきたレッドの手には、瓶ではなくグラスが。
「一杯分しか残ってなかった。」
そんな言葉と共に置かれたグラスの酒は、なるほど確かに白い。
「米使って作るんだけどな。」
「日本酒と同じか。」
「近ぇが、コッチの方が一日位で出来る。」
そう言ってレッドの手は何気なくヒィッツにそのグラスをすすめ、
「本来はもち米をみりんに漬けたりとかしながら作るらしいんだけどな。
 まあ、これはそれよりももっと単純だな。」
「ふん?」
すすめられたグラスを極々自然の成り行きで受け取り、ヒィッツはグラスに口をつけた。
―――――米を使う、と聞いた時点で、その匂いには油断していたらしい。
「…って、一杯分しか残ってなかった
米のとぎ汁の味はどうだ?」
数十分前の巻き戻しのように、ヒィッツが盛大に噴き出した。
レッドはその様子を腹を抱えて笑い飛ばすと、
「見た目は同じ様なもんだぜ?また一つ利口になって良かったなぁ?!」





―――――サロンを中心に本部の建物が半壊するまで、あと3分。





* * * * *

レッドはいつだってヒィッツを陥れる隙を狙っています。
赤い悪魔に油断してはいけません(苦笑)。